【社労士監修】自己都合による失業期間中は、国民年金の保険料免除を利用しよう!
働き方改革が進み、在宅勤務・テレワークの開始、副業・兼業の解禁、早期退職制度の若年化など働く環境も以前とは大分変わってきました。
そのような変化の中、会社員で勤めている方も、今後のキャリア形成を踏まえて起業や転職活動を検討されている方も多いと思います。
ただし、転職や起業など仕事や働き方を変える際には、一時的に失業中となることもあり、収入がない中で社会保険料や税金等の負担が大きく圧し掛かることもありります。
実際に転職や起業する方の中にも
「失業期間中は国民年金に加入しなくてはいけないのか?」
「失業期間中は収入がないので、国民年金保険料を払えない・・・」
と悩まれている方もいらっしゃいます。
今回はそのような方向けに、失業期間中における国民年金保険料の免除制度について解説していきます。
【この記事でわかること】
「失業期間中は国民年金の保険料免除制度が利用できます!」
「保険料免除制度を利用することで保険料負担を減らせます!」
国民年金には必ず加入しなければならない
会社員の方の場合は、会社員向けの厚生年金保険に加入していることになりますが、実際には国民年金の第2号被保険者としても国民年金にも加入していることになります。また会社員は給与からチェックオフされることで厚生年金保険料を納付していることになり、国民年金保険料については個別に納付する義務はありません。
一方で会社を退職する場合は、同時に厚生年金保険への加入資格も喪失しますが、国民年金は国民皆年金のため、退職して失業期間中であったとしてもそのまま第1号被保険者として加入し続けることになります。また「国民年金」は強制加入となるため任意に脱退することができず、必ず加入しなくてはいけません。
国民年金保険料は自分で納付する
会社員向けの厚生年金保険については、保険料が給与からチェックオフされ自動的に納付される形ですが、国民年金については保険料は自分で納付しなくてはいけません。
また、原則として、失業しているか失業していないかに関わらず、保険料を納付する義務があります。
国民年金保険料はいくら?
令和3年度分の国民年金保険料は、16,610円(月額)となります。なお保険料の納付方法については、口座振替やクレジットカード払い等があります。
所得金額における「保険料免除制度」
ただし、厚生年金保険料が所得に応じて保険料が定められているのに対して、国民年金保険料は所得に関係なく一律の金額が定められていることから、所得が低い場合は保険料負担が大きく圧し掛かることとなり、さらに生活が困窮する可能性があります。
そのような、低所得向けにつくられた制度が「保険料免除制度」となります。
保険料免除制度については、国民年金に加入する本人はもちろんのこと、その配偶者・世帯主の前年の所得金額が一定基準額以下の場合に、保険料が免除される制度となります。
なお、所得金額に応じて保険料が全額免除となる場合もあれば3/4免除、1/2免除、1/4免除となる場合もあります。
ここで注意しておきたい点は、「保険料免除制度」の対象となるのが「あくまでも前年の所得金額であり、失業時点での所得金額ではないこと」、また自分だけの前年所得だけではなく、配偶者や世帯主の前年所得も対象となることです。
つまり、失業している現時点で所得が無かったとしても、前年に所得があった場合は保険料免除が適用されないことになり、また自分だけ失業していても家族が働いて一定の所得がある場合も同様となります。また保険料が免除された分、将来もらえる年金額も目減りしてくるので注意が必要です。
失業期間中における「保険料の特例免除制度」
一方で、会社員で1人暮らしの場合や、会社員で家族を扶養していた場合で、実際に失業して所得がゼロとなった場合はどうなるのでしょうか?
家族の収入も無いため、前年所得があるからと言って保険料が免除されずに負担しなくてはいけないとなると、生活が困窮していくのが目に見えています。
そのようなケース、すなわち失業によって所得がない場合に利用できるのが「失業等による保険料の特例免除制度」になります。
この「失業等による保険料の特例免除制度」とは、先述した一般の「保険料免除制度」とは違い、本人の所得は対象外とされるため、前年所得があったとしても「所得ゼロ」の扱いとなります。つまり、配偶者や世帯主がいない場合や、配偶者や世帯主がいても収入が低い場合は、失業しているという条件だけで、保険料免除が適用されることとなります。
また失業の状態であれば良く、失業の理由(自己都合や会社都合、倒産、事業廃止など)は関係なく、利用できる制度になります。
「特例免除制度」の申請方法
「失業等による保険料の特例免除制度」については、会社員が退職して失業中である場合の他、個人事業主として事業を廃止した場合でもこの制度を利用できます。今回は両方のケースにおいて、申請方法または申請手続きに必要な資料を簡単に紹介しますので、ぜひ確認してみてください(※詳細について知りたい方はお近くの年金事務所へ確認してみてください)
申請に必要な書類
会社を退職して失業した場合
《必ず必要なのもの》
- 年金手帳または基礎年金番号通知書
《追加で必要となるもの》
- 雇用保険受給資格者証の写しまたは雇用保険被保険者離職票等の写し
※雇用保険の被保険者であった方が失業等による申請を行う場合 - 前年(または前々年)所得を証明する書類
※原則として所得を証明する書類の添付は不要
個人事業主の方で事業を廃止した場合
《必ず必要なのもの》
- 年金手帳または基礎年金番号通知書
《追加で必要となるもの》
- 厚生労働省が実施する総合支援資金貸付の貸付決定通知書の写しおよびその申請時の添付書類の写し
- 履歴事項全部証明書または閉鎖事項全部証明書
- 税務署等への異動届出書、個人事業の開廃業等届出書または事業廃止届出書の写し
※税務署等の受付印のあるものに限る - 保健所への廃止届出書の控(受付印のあるものに限る。)
- その他、公的機関が交付する証明書等であって失業の事実が確認できる書類
以上の書類の他に、失業の状態にあることの申し立てが必要となる場合があります。
申請書
上記の必要書類の他に「免除・納付猶予申請書」が必要となります。日本年金機構HPより下記ファイルがダウンロードできます。
国民年金保険料 免除・納付猶予申請書(PDF 1,638KB)
申請先
住民登録をしている市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口へ申請書を提出してください。
なお、申請書は郵送で提出可能な自治体もありますので、事前に確認してみると良いでしょう。
金銭的に余裕が出来たら「追納」
保険料免除制度とは文字通り、保険料を免除することで負担を減らすことを目的として制度ですが、保険料の負担が減った分、将来もらえる年金額も少なくなります。
そのため転職後や起業後に収入が安定してきて、金銭的に余裕が出てきた場合は、「保険料の追納制度」を利用することでより、過去10年間の保険料を後から納付することができます。この追納制度により免除された保険料を全額納付できれば将来もらえる年金も目減りすることなくもらえますので、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか?