【社労士監修】転職・起業時の国民年金と厚生年金の切り替え方法を解説
働き方改革が進み、今では一生涯同じ会社に勤務するというよりは、自らのキャリアアップのため就職・転職または起業を考えている方も多いのではないでしょうか?
一方で働き方が変わる時、会社員であるか否かによって国民年金と厚生年金の切り替えが必要となる場合があります。また人によっては新しいキャリア形成のため長期間にわたって失業する方もいれば、空白期間(失業期間)無く、すぐに転職・起業する方もいると思います。
年金制度自体が国民皆年金であり、どんな働き方であれ常に加入していることが必要不可欠となるため、
就職・転職や起業をする方の中でも
「自分は国民年金・厚生年金どっちに加入するのか?」
「加入する時の手続きは?保険料は?」
【今回記事でわかること】
「働き方を変えるときに年金の切り替え方法がわかります!」
「国民年金」と「厚生年金保険」どちらかに加入
公的年金制度には「国民年金」と「厚生年金保険」という2つの年金制度があり、働き方によってどちらかの年金に加入するかが決まります。
自営業者や学生は「国民年金」へ
国民年金は「基礎年金」とも呼ばれており、日本国内に住む20歳以上60歳未満の人が加入する年金となります。国民年金に加入する人については、自営業者や学生、または無職の人などの「第1号被保険者」、会社員や公務員などで厚生年金保険に加入している「第2号被保険者」、最後にその第2号被保険者に扶養されている配偶者である「第3号被保険者」の3種類に分けられます。なお国民年金保険料については「第1号被保険者」のみ納付する義務があります。
会社員や公務員は「厚生年金保険」へ
企業に就職する人で、主に会社員や公務員の方が加入する年金となります。厚生年金保険に加入している人は国民年金における「第2号被保険者」となり、保険料自体は厚生年金保険料のみを支払っているイメージですが、国民年金の「第2号被保険者」としても加入しており、老後は「国民年金」と「厚生年金保険」の両方から年金を受け取ることができます。
保険料については、厚生年金保険料を納付する義務はありますが、国民年金保険料については納付義務はなありません。(厚生年金保険料に含めているものと解釈されています)
年金の加入期間と保険料負担について
年金の加入期間について
就職・転職、起業する時に知っておきたいのが、各年金制度への加入期間です。
この点について「国民年金」でも「厚生年金保険」でも加入期間の考え方は同じであり、いずれも「年金制度の対象となった月から、対象外となった月の前月までが加入期間となります。
国民年金で言えば、20歳に達した月から加入期間が始まって60歳に達した日の前月まで終わります。一方で厚生年金保険で言えば、会社員として働き始めた月から退職した日の翌日の属する月の前月までが加入期間となります。
特に月末の場合は注意が必要なので、事前に確認しておくと良いでしょう。
【国民年金の場合】
例:誕生日が4月1日の場合
⇒60歳に達した日とは誕生日前日の3月31日
⇒国民年金は60歳に達した日の前月のため、加入期間は2月まで【厚生年金保険の場合】
例:3月31日で会社を退職する場合
⇒厚生年金保険の資格喪失は翌日の4月1日
⇒厚生年金保険は資格喪失日である4月1日の前月のため、加入期間は3月まで
保険料負担について
保険料負担については、先述したとおり年金の加入期間と同じ期間分の保険料を負担することになりますが、月末に退職した場合や、同月内で転職した場合は保険料の負担が異なるので注意が必要です。
■月末に会社を退職した場合
例えば3月31日で会社を退職した場合は、厚生年金保険の資格喪失はその翌日の4月1日となるため、3月末分までは厚生年金保険料を支払うことになります。この場合2月、3月分の厚生年金保険料が3月分の給与からチェックオフされます。
■月中に会社を退職した場合
一方で3月15日で退職した場合は、厚生年金保険の資格喪失日はその翌日の3月16日となり、その前月の2月分までの厚生年金保険料の支払うこととなります。
■同月内に転職・起業した場合
3月15日で退職して、3月25日に別会社へ転職した場合は、2月分までの厚生年金保険料が前の会社の給与からチェックオフされ、3月分からは別会社の給与からチェックオフされます。
また会社へ転職しないで起業した場合や、そのまま失業している場合は、3月分から国民年金保険料を自分で納付することになります。
■同月内に複数回転職した場合
例えばA会社へ3月1日からA会社に就職し、3月15日に退職。さらにその後3月20日にB会社へ就職した場合はどうなるのでしょうか?
3月1日から3月15日まではA会社における厚生年金保険に加入することとなるため、この場合は同月得喪といって厚生年金保険料はA会社の給与からチェックオフされます。その後3月16日から3月19日までは短期間ですが国民年金に加入することとなり、国民年金保険料を納付する義務が発生します。さらに3月20日からはB会社へ就職するので、B会社における厚生年金保険に加入することとなり、3月分の厚生年金保険料が給与からチェックオフされることとなります。
このケースでは、3月は一番最後に加入したB会社における厚生年金保険の加入期間に含まれるため、払い過ぎた保険料=A会社での厚生年金保険料と国民年金保険料のは後から還付されることとなります。なお、国民年金保険料は支払期日が翌月末(4月末)までなので、それまでに納付していなければ還付されることもありません。
国民年金から厚生年金保険への切り替え
国民年金に加入していた人が厚生年金保険へ加入する場合は、就職先の会社を経由して手続きをすることになります。入社が決まると就職先の会社から案内があるので手続きを進めていきましょう。一般的にはマイナンバーや年金手帳の提出などを求められます。
また就職先で厚生年金保険へ加入することになると、自動的に国民年金の資格を喪失するので、国民年金については個別に手続きをする必要はありません。しかし、就職した月の前月分までの国民年金保険料は納付する必要があるので、自分がどの月分まで国民年金保険料を納付したかを確認して、未納期間が無いようにしておきましょう。
なお、年金の話ではありませんが国民年金に加入している人は、国民健康保険にも加入している方が多いと思いますが、国民健康保険については、就職をしたら原則14日以内に役所へ「国民健康保険の喪失手続き」を提出する必要がありますので注意しましょう。
厚生年金保険から国民年金へ切り替え
厚生年金保険から国民年金への切り替えについて、色んなケースが想定されます。
【国民年金への切り替えが必要なケース】
- 会社員を退職して起業した場合
- 会社員を退職して失業している場合
- その会社員に扶養されている配偶者の場合
- 収入が130万円未満に減った場合(企業規模によっては106万円)
なお、前述した厚生年金保険への切り替えとは異なり、国民年金への切り替えは、原則として自分自身で行うので注意が必要です。
厚生年金保険から国民年金へ切り替えになるケースでは、就職先経由で厚生年金保険への加入手続きをすることで自動的に国民年金の脱退手続きも行われますが、厚生年金保険から国民年金への切り替えについては、厚生年金保険の脱退手続きとは別に国民年金の加入手続きは自分で行う必要があり、退職後14日以内に居住地の役所か年金事務所での手続きが必要となります。手続きとしては退職日がわかる証明書(退職証明書や離職票など)と年金手帳、本人確認書類を持参することとなりますが、詳細は各市町村窓口で確認すると良いでしょう。
また同時に国民健康保険への加入も必要となり、こちらも退職した日から14日以内に加入手続きが必要となりますので注意しましょう。
手続き忘れに注意
国民年金から厚生年金保険については勤務先が手続きを行うので問題がありませんが、問題となるのは厚生年金保険から国民年金へ切り替える場合です。
国民年金への加入手続きを失念してしまった場合、その間保険料が未納となります。その未納期間が保険料の納付期限から2年以上経過すると原則保険料を納付することができません。
保険料の未納期間があると将来の年金額(老齢基礎年金の額)が減ることはもちろんのこと、障害基礎年金や遺族基礎年金が受給できない可能性もあります。また本人だけではなく、今まで扶養に入っていた配偶者の加入手続きも必要となるため、家族の分も含めて手続き漏れがないか注意しましょう。
なお、失業によって収入が無い場合や、転職・起業後の収入が減ったことにより、国民年金保険料が払えない場合は、保険料免除制度や納付猶予制度が適用されることもあるので、各市町村窓口で相談のうえ申請手続きをすることをお勧めします。
最後に
年金手続きについては、その時になって初めて知ることが多いのですが、手続きを忘れてしまうと将来の年金額が減ったりと様々なデメリットが発生してしまいます。また年金の切り替え手続き自体が、転職や起業等の人生のターニングポイントとも重なることが多く、大変な時期での手続きとなるので、忘れないよう常に意識しておくことが大事です。